弘法大師

弘法大師は、宝亀5(774)年に讃岐国(現在の香川県善通寺市)にお生まれになりました。
弘法大師は唐(現在の中国)に渡り、インドから脈々と伝わる真言密教の教えを長安(現在の西安)青龍寺の恵果阿闍梨から授かり、正当な密教の継承者となりました。

恵果和尚が弘法大師に伝えたお言葉
「早く郷国に帰ってもって国家に奉り、天下に流布して蒼生(そうせい)の福を増せ」
早く日本に帰って、この真言密教の教えを国家に奉呈し、天下に広め、多くの人々(蒼生)の幸福を増しなさい。
その遺言の通りに帰国後、真言宗を開かれて、修禅の道場として高野山を開創し、真言宗の根本道場として東寺を嵯峨天皇より賜り、真言宗の教えを広めました。そして日本において庶民の為の初めての学校である「綜芸種智院」を開設し、満濃池・益田池修築等の社会福祉活動を積極的に実践し衆生利済に努められました。

真言宗の教え

この法はすなわち諸仏の肝心、成仏の径路なり
国に於いては城郭たり。人に於いては膏腴たり

御請来目録

すなわち密教は諸仏の肝心、成仏の径路であり、
国においては、迷いから人々を守る城であり、
人々においては、安楽な豊かな暮らしが出来る教えです。

この法は即ち佛の心、国の鎮(しずめ)なり、
氛(ふん)を攘い、祉(さいわい)を招くの摩尼、
凡を脱(まぬが)れ聖(せい)に入るきょ径なり

性霊集

密教は仏の心髄であり、国の鎮護です。
災いを払い、幸福を招く摩尼宝珠のようなものであり、凡夫が御仏の悟りに到達する近道であります。

真言宗の大切な教えに即身成仏があります。
即身成仏とは、私たちが現世において父母から頂いたこの身このままで御仏の悟りを得て、仏と成ることができるということです。

私たちの心の中には本来清らかな仏の心が具わっています。

弘法大師は般若心経秘鍵の中で、
「蓮を観じて自浄を知り、菓(このみ)を見て心徳を覚る」
蓮は泥中にあってもそれに染まらず、浄らかな花を咲かして実をつけます。
私たちたちは迷いや悩みや煩悩という泥に覆われた浮世を耐え忍んで日々を生きていますが、心の持ち方でその泥に染まること無く、誰もが蓮のような心を持ちその美しい花を咲かせる事ができることをお大師さまはお教えくださっています。

そして一粒一粒の種の中に花の全てが備わっているように、私たち一人一人の心の中にも仏さまの徳が宿っているという事です。

また弘法大師は般若心経秘鍵の中で
「それ仏法遥かに非(あら)ず、心中にして即ち近し。」

仏さまの悟りは私たちの遥か遠くにあるのでは無く、私たちの心の中にこそ在り、とても身近なものである。とお教えくださっています。

その内なる仏心に目覚めるには、自らが悟りを求める心と共に御仏の慈悲による御加護を受け止める信心を持ち、そして自分自身を深く観察して、仏さまのような心で仏さまのように語り、仏さまのように行うことで本来大日如来である自らの心を呼び起こす三密の妙行が肝要です。

この教えをもとに仏の心で皆が互いを敬い尊重し、そして助け合い、支え合う事で我々の精神も豊かなものになり、この世に浄土のような美しい幸せな世界が実現します。